第31章 変化と進展
五条の声は軽くなる
「伊地知~」
「はい」
「紅海の家、もう一回見るから、紅海の家の鍵貸してよ?」
「すでに流鏑馬さんの家は…」
「僕が見るって言ってんだろ?」
「あと」
五条は付け加える
「これ、交流戦の件と繋がってる気がする」
五条だけが感じていた
あの模擬戦の時、紅海の呪力の奥に混ざる別の波長
あれは彼女の呪力ではなかった…
「紅海…」
彼女の痕跡を追うために五条は動いた
同時刻…
夕日は沈み…月明かりが照らす
紅海の意識は、深く沈んでいた
真人に抱えられている感覚だけが残っている
どこか高級住宅のプールサイド…ベッドを並べて2人の影が見える
真人はご機嫌に紅海の身体に腕を伸ばし
魂を覗いたり感じたりしている
「夏油は連れてこいって言ってたけど、もうちょっと遊んでも大丈夫だよね?こんな面白い魂、初めてだしさ」
家主は真人の術式で眠らされている…
紅海の身体は重い視界はぼやける
熱が意識を溶かし、魂の境界が曖昧になっていく
そして底が割れ、何かが吹き出していく感覚
紅海の内側…巫女の魂が、初めて外へと浮上する
瞳が開く…だが、その視線は紅海のものではない
呼吸が変わる背筋が反り、指先が強く震えた
「あれ?起きたの?」
真人が気付く
次の瞬間…暴れる
「離せ!!」
真人の腕を強引に振り払う…異常な力だ
魂そのものの主導権が変わった
真人の目が輝く
「…お?」
紅海…いや、巫女が笑った
荒く、歓喜に満ちた笑み
「晴れてこの身体を手に入れたんだ!!」
呪力が爆ぜ空気が裂ける
反射的に真人が距離を取る
床が砕け、壁に亀裂が走る
真人は軽く後退しながら興味津々で観察する
「わぁ…」
巫女は胸に手を当て、震えながら笑う
「っはははは……!」
狂気と恍惚が混ざる
「あぁ、愛されている身体……!」
指先で自分の頬を撫でる
「これで私は、生まれ変わるんだ」
紅海の声なのに人格が違う
視線が、遠くを向き走り出した
真人が一歩踏み出し追うか迷い…止まる
それから肩をすくめた
「ま、いっか」
笑う
「また探しに行けばいいか、あんな呪力、すぐに見つけられる」
真人はその場から消えた
巫女に乗っ取られた彼女は
誰も知らない場所へ消えた