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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第31章 変化と進展


交流会戦前日

流鏑馬紅海は、自宅の寝室で静かに息を吐いた

37.6度

体温は、高熱まではいかないが、平熱よりも高い…

身体が妙に重い
骨の奥に、鈍く沈むような倦怠感

――昨日、悟と本気でやり合った反動だろうか
そう結論づけるのが、一番自然だった

これは、もうちょっと熱上がるかなぁ

スマートフォンを耳に当て、各所へ連絡を入れる
「すみません……寝てれば治ると思うので…
はい……遊佐くんにも共有してます。私がいなくても大丈夫です」

通話を終えると、力が抜けた
ペットボトルの水を流し込む喉を通る冷たさだけが、現実感をくれる
「はぁ……」
天井を見上げる
「……見たかったな…交流戦」
ぽつりと零れた本音は、誰にも届かない

その時、スマートフォンが震えた
画面に映る名前…遊佐由布湯
通話をスライドすると、いつも通りの落ち着いた京都弁が流れた
「紅海ちゃん、大丈夫?
 一日繰り上げて、今から、そっち行こか?」
思わず、少し笑う

「大丈夫だよ、何日か寝たら治ると思うから…
遊佐くん、ありがとう…心配してくれる人がいると、すごく嬉しい…」
通話を切ると部屋の中に、自分の呼吸音だけが残った

――そういえば京都にいた頃
一度だけ五条が看病に来たことがあった

うなされてたから夢かと思ったのに夢じゃなかった

適当に風邪に効くものを買ってきて
今日は仕事休め…みたいな事言われた気がする
忙しいのに、京都まで来てくれて…本当に優しい
「あれ……なんで今、思い出すんだろ」

たぶん熱のせい…そう思った瞬間

胸の奥が、ひどく静かに沈んだ…
魂の底から、感情が浮かび上がる
――悲しい
理由がわからない…自分の感情ではなかった
なのに確かに感じる…
紅海の意識が半分眠りに落ちかけた時

誰にも触れられないはずの場所で、侵食していく
紅海の魂の縁に白い水が満ちるように、静かに覆っていく

涙が、理由もなく一筋流れた

「……さみしい……?」

自分の声なのに、誰かの声のようだった
眠さが濃くなり意識が沈む
巫女の魂が、紅海の魂へ触れ始めていた
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