第30章 呆然と失墜
紅海が低空回転から足払い
五条が避けるが着地前に紅海の拳が腹へ突き上がる
「うわ、読むねぇ…」
空中で体勢を崩しながらも五条が手をつく
そのまま反転して足刀蹴り
紅海の肩を打ち身体に衝撃が走る
数歩、素早く下がる
重い…!
五条は、そのまま踏み込み拳を繰り出す
紅海が腕で受ける
五条のリーチが長いが…五条より小さいことを生かし紅海は逆に懐へ潜り込み鳩尾へ掌低打ち、連撃を仕掛ける
膝蹴り回転踵落とし
五条が受け切れず後退
「ははっ…」
思わず五条が笑う
五条の重心が変わり踏み込み速度が一段上がった
真正面に拳を繰り出す
紅海の視界が揺れ見切るのがやっとだ
速!!
咄嗟に腕で防御、衝撃で身体が弾かれる
川瀬を滑る
五条は止まらない
追撃し蹴りを繰り出す
紅海が転がって回避し立ち上がりざま回転蹴り
五条の頬を掠める…ピタ、と二人が止まる
互いに笑っていない完全に戦闘の顔だ
夜蛾が腕時計を見る
残り一分
五条が小さく呟く
「……怖いねぇ…ココまで僕を本気にさせる?」
紅海も息を整えながら返す
「それ、褒め言葉?」
言い終わると同時に踏み込んだ
拳と拳。
真正面から衝突
衝撃がモニター越しに響く
五条の拳が紅海へ向かって振り抜かれる
躊躇は、ない
の拳が五条の胸を捉えたが
スレスレで五条は紅海の手首を握る
そこで
「―そこまでだ」
夜蛾の声
風の音だけがモニタールームに聞こえる
モニタールームでパンダが呟く
「これ、模擬戦?模擬戦って、もっと練習試合みたいなイメージだったんだけど?」
「まぁ、確か、実践の戦闘を模倣した疑似練習…って意味だったしな…この2人なら、こうなるか…ってところだよな」
真希が納得する
「やば…紅海ちゃんの株が爆上がりだわ…」
「ファンクラブ出来たりしてな?」
野薔薇のコメントにパンダが乗っかる
フィールド…
五条が肩で息をしながら笑った
「…いやぁ…強くなったね、紅海」
純粋に笑う
紅海はまだ呼吸を整えながら立っている
拳が震えている戦いの余韻だ
ようやく同じ場所に立てた感覚
模擬戦が終わったフィールドには、まだ砂煙の名残が浮いている
整備班が結界の術式を解除していく音だけが遠くに響いていた