第3章 そよかぜの共鳴
人間ピンボール、そんな言葉がピッタリだなと思う程度には目の前の惨状はサッカーとは言いがたかった。
天馬くんが交代しても状況はさほど変わらず、スコアは変わらず京介達が圧倒的に有利なまま後半戦に突入。
開始早々またも雷門側は防戦とも言えない壁打ちのような状態であり、ついにはコート外へ足を踏み出す選手まで出てしまっていた。
「彼は何を始めたのでしょうか?」
「パスも出さずに延々と……点数にならないというのに」
何度目かの雷門へと渡ったボールは、天馬くんの足元で転がり続けていた。
縦横無尽にコートを駆け抜ける彼は、先程までと同一人物と思えないほどに華麗なドリブルで何人もの選手をごぼう抜きしていく。
ボールが誰かへ繋げられることはなかったが、天馬くんがボールをキープする以上は他の誰にも被害が出ていなかった。
「(なるほど、彼の狙いはこの状況か)」
とはいえ、思いつきをその場で実行できる彼のドリブル力は目を見張るものがあった。
もっとも、それもすぐに京介達の策略によって止められてしまうのだが。
化身を出してまで潰そうとするだなんて、本当に今日の彼は余裕がないように見える。
それとも、監督席にいた黒木さんの指示だろうか。
「なんですかあれは……?!」
化身は気力の具現化とでもいうべき存在であり、おそらくこの場の大半の人間にとっては都市伝説レベルの存在だろう。
シードの中でさえ、化身の習得有無で格差がかなりある。
その程度には化身という力を乗りこなせる人間は限られていた。
だから『彼』は、特別だと思った。