第2章 第二話
あの気配、まるであの金目の青年の気配みたいな。
私はその気配のしたほうへと向かった。
それは、私が借りている部屋から感じられた。
私は霊感とかないけど、なぜか感じるのだ。
思い切ってドアを開ける。
しかし、誰もいない。何もない。
出て行ったときと何も変わらない状態だった。
「そりゃ…そうよね…」
そう言って、部屋から出ようとした。
しかし、ぬぐい切れない違和感。
私はふと、シルクハットを手に取った。
(重い。)
少しだけ重みのあるシルクハット。
私はひっくり返してみた。
ボトッ
「!!!!!」
私は驚いて飛び跳ねた。
中から、緑色の装飾のついた黒い帽子が出てきたのだ。
帽子が増えたーーー!!!
私は驚いてドテーン!!と転んでしまった。
「どうしたの?シアン?」
その音を聞きつけたレイニーちゃんが、部屋にやってくるなり、
「あ!!素敵な帽子!なんか、さっきヨークさんが言ってた帽子みたいだね」
と言って帽子を指さした。
「い、い、いりますか!!!??」
「え?」
「これ、私、いらない!!」
私は動揺しすぎて、怖いものでも見るような眼をしつつ、その帽子をレイニーちゃんに渡した。
「え?あ、ありがと!でもさ、これ、ヨークさんにあげたら喜ぶんじゃないかな?追いかければ間に合うよ!」
そう言って、私の手を引いた。
そのままお店を出て、レンガのパン屋さんの角を曲がると、ヨークさんが洋服屋さんを見ていた。
「ヨークさーん!」
レイニーちゃんが帽子片手にヨークさんに声をかけると、とても驚いた顔をした。
「そうそう、そんな帽子。探していたんだ」
「そう思って持ってきました。私がこの、シアンにもらったんですけど、ヨークさんの奥様にあげたほうが喜ぶと思って」
「それはうれしいねぇ。でもこんな立派な帽子をタダでもらうわけにはいかないよ。少し代金を受け取っておくれ」
そう言って銀貨を1枚くれた。
「え…でも…」
私は困ってレイニーちゃんを見るとニコニコしていた。
「そんなに渡せなくて申し訳ないねぇ」
そう言って、ヨークさんもニコニコした。
でもでも、変な帽子から出てきた変な帽子なんです!!とは言い出せなくなってしまった。