第2章 第二話
「シアン~、そっちにカスミソウ置いて~!」
「はーい!」
そして現在、私はレイニーちゃんのおうちのお花屋さんのお手伝いをしております。
結局あのあと、私の学校のある佐野市を知っている人は誰もいなくて、途方に暮れていたところ、レイニーちゃんがおうちに泊めてくれた。
「人手があると助かるわ~」
そう言ってほほ笑むのは、レイニーちゃんのママのハンナさん。
こんな得体のしれない私を置いてくれた優しい人だ。
やっぱり、ここは…
『異世界』なんだ…
よく、漫画とかで聞いたことあったけど、いざ自分がくることになってしまうと非常に困る…
そんなことを考えていると、第一お客さまがやってきた。
ひぃ!
私接客なんてやったことない!!!
「い、いらっしゃいませ…」
ひきつった笑顔でなんとか声を絞り出した。
「今日は何をお探しですか?」
ワタワタしていると、テキパキと作業を終えたレイニーちゃんが助けに来てくれた。
ほ…っ
年下なのに、私の何倍もしっかりしたレイニーちゃん。
頼りになるぅ!と感心していると、私の持っていたカスミソウが欲しいと言われまた固まる…
「今日は妻の誕生日でね。いい花に出会えてよかったよ。ありがとう」
やさしげなおじいさんは嬉しそうにそう言った。
「よかったでつっ」
一言すら噛む私。情けない。
「他に何をあげるかまだ考えてなくてね…そうだな、帽子ならいいかもな」
「帽子…」
私は反射的に、あのシルクハットを思い出していた。
あのスーツの金目の男性、なぜかあまり思い出せないのだ。
スーツの形とか、金目以外の特徴が全く。
「ヨークさん(おじいさんの名前)は、奥様にどんな帽子をプレゼントなさるんですか?」
と、ハンナおばさん。
「そうだねぇ。妻は緑色が好きだから、緑色の装飾のついた帽子にしようかね」
「それなら、それに合うお花プレゼントしますよ」
「いつもありがとうねぇ」
す、素敵な会話すぎる。
私もいつか接客で、こんな会話できるといいなぁ…
そんなことを考えていると、不意に妙な気配を感じた。
思わず固まっていると、ヨークさんはにこやかに去っていった。