第1章 第一話
「なんだったんだろう…」
私は結局、帽子を持ったままうろうろするしかできなくなってしまった。
試しにかぶったことは内緒だが。
「乗り物乗って帰ろっと」
くれるといわれたので、きっといらないのだろうと思いなおし、私は遊園地を満喫することにした。
「乗り物どこかな~」
パーク内は見事な西洋風の家々だった。
お花屋さんもあるし、パン屋さんもある。
ちょっと地味な色味の洋服に身を包み、まるで本当にこのセットの中の住人みたいだった。
しかし、メリーゴーランドやジェットコースターのような乗り物はついに見つからなかった。
「…あれ…?私迷ってない…?」
同じような街並みのため、私はすっかり迷ってしまった。
なんとか先ほどの入り口を見つけようとしたけど、辺りはすっかり暗くなってしまった。
パーク内の地図を見たかったが、それもどこにも見つからず、仕方なく人に聞いてみることにした。
「すみません…」
店じまいを始めていた、同じくらいの年齢のお花屋さんの女の子に声をかけてみた。
「…ごめんなさい、もうお店閉めるの…」
少女は困ったような顔をしていたので、私は少し躊躇したけど、勇気を出して聞いてみた。
「あの、入り口、どこですか…!?」
人見知りの私にはそれだけ聞くことしかできなかった。
「入口?…ああ、町の入り口ね。迷ったの?」
少女に聞き返され、私はブンブン頭を縦に振って肯定した。
「じゃあ、一緒に行ってあげるよ。案内する!」
その少女は、家の人たちに事情を説明し、私とともに夜の闇の中へと歩き出した。
「名前は?私、レイニー」
「レイニーさん!私、紫杏(しあん)って言います」
「シアンちゃん?敬語じゃなくていいよ~」
そう言ってレイニーちゃんは笑った。
レイニーちゃんは、私の一個年下の16歳で、お花屋さんとして、もう6年も働いているらしい。
(すごいなぁ…私はバイト一つやったことないのに…)
そんなことを考えながら歩いていると、15分くらいで、町の入り口に着いた。
「え…」
私は町の入り口を見て、愕然とした。
そこには、立派な門があり、その外にはレンガの道が続いている。そして、周りは一面何もない原っぱだったのだ。