第1章 第一話
うだるように暑い日だった。
私は、公園のベンチに座って、英単語を覚えていたとき、ふと隣を見ると、そこには黒いシルクハットが置いてあった。
私は、忘れ物だと気づき、急いで周りを見渡してみると、それらしき立派なスーツを着た、若い男を発見した。
「あの…!」
私は走ってその人物を追いかけたが、人物は優雅に歩いているだけなのに、なぜか全然追いつけない。
「足はや!!足の長さの違いなの!???」
私は自分で言っていて、ちょっと悲しくなった。
それでもなんとか追いかけて走っていると、見慣れない通りにやってきてしまった。
(学校の近くも、まだまだ知らないところがあるのね)
そんなことを考えていると、その人物が何かの前で立ち止まっているのが見えた。
「遊園地だ!!!」
なんと路地裏に大きな西洋風の遊園地があった。
私は新たな発見に、うれしくて思わず飛び跳ねた。
そんなことをしている間に、帽子の持ち主らしき男性は遊園地の中に入っていってしまった。
「あわわ!!」
私は入口の前まで追いかけてみた。
入場料を払えるほど手持ちはないと思うのだが…
そして、入り口前に行ったときに、券売機らしき機械を見てみた。
「あれ?券売機ちゃう」
お金を入れるところがあるのだが、そこには『両替機』とだけ文字が書いてあった。
「両替機?」
私は試しに100円をいれてみた。
すると、大きい銅貨と小さい銅貨が出てきた。
「????」
異国のお金見たいのが出てきた。
もしかしたら、よくある、パーク内で使えるお金なのかもしれない。
私は楽しくなって、手持ちのお金を全部パーク内の通貨?に変えてしまった。
そして、入り口らしき、木の柵でできた手押しドアを開けると、あっさり中に入れてしまった。
「あれ?お金…乗り物ごとにお金とられるシステムかな?」
そう思って、顔を上げると、目の前にあのスーツの男性が立っていて、目が合った。
金色の瞳をしていた。
「あ!!!あの、この帽子…」
「それは今日から君のものさ」
そう言ってその男性は身をひるがえして建物の中へと消えていった。
私はその姿を呆然と見ていることしかできなかった。
なぜか、不思議な魔法で姿を消したようにも思えて、私は追いつけるとは思えなかったのだ。