第7章 第七話
「み、みっか?みつきのまちがいじゃなくって?」
夫人もいぶかしげな顔をしていたけど、もうそれでやってきてしまったので、そういうことにしておいた。
夫人は最後まで不思議そうな顔をして帰っていった。
「そういえば。お前の作業している姿、一度も見たことないな」
「え??見たいとか言いませんよね?」
「それは…」
見たかったのか、少し困ったような表情をしていた。
「企業秘密です」
ときっぱり断った。
だって、ずるしてるもん私。
「お前は…本当に物怖じがないな…」
と、セカは苦笑する。
「それは、セカに対してですか?…ないかも。」
と、私は少し考えてみたものの、まったくないことに気づき、そう答えると、セカは声を上げて笑った。
「お前といると愉快だな。退屈しない」
「ゆかい…」
ゆかいってはじめて人の口から聞いたわ。
なんやかんや、セカと仲良しになった気がする。
どちらかというと、一方的にお世話になってる気がするけど…。
「そうだ、セカ。
もしもよければ、日ごろの感謝をこめて帽子をお作りしたいのだけど。なんか希望はありますか?」
「なんだ、気持ち悪い…。感謝って、俺はお嬢様の命令でお前の面倒を見ているだけだ」
「それにしては、お世話になりすぎていると思って」
「そう思うなら、もっとしっかりしてくれ…」
ごもっとも。
でも、急にしっかりはできないので、帽子を贈ることにした。
「そうだな…一番欲しいのは、火を防げる防火の頭巾なんだが、そういう物は可能なのか?」
「え?防火頭巾?ファッションじゃないんだ。」
「火の魔物が最近増えてきて…って何驚いた顔してるんだ」
「い、いえ…ま、魔物の火ですか…」
魔物なんているんだこの世界。
こんなこと言ったらさすがにドン引かれると思い、飲み込んだ。
…シルクハット氏は、どこまでできるんだろう。
防火頭巾なんて出せるのかな?
「できるかできないかは、後ほどお伝えします。できなかったら、普通の帽子にしてくださいね」
と、釘を刺しておいた。
そして、夜。
部屋でシルクハットに帽子を頼んだ。
まずは、ミソラさんの帽子。
スケッチブックを持って、シルクハットに見せる素振りをする。
毎回やっている儀式だ。