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シアンの帽子屋さん

第7章 第七話


銀貨は、お金の価値、日本円に直すと約2万円らしい。
頭を抱えているセカさんに聞きました。

「お前、どうやって生きてきたの?」

力なく聞かれるが、私も答えに困った。
セカの周りは、どうやら完璧な女性が多いらしく、私のような出たとこ勝負女はそうそういないらしい。

「え?完璧な人間っていなくないですか?」

「いかに完璧であることを演じられるかが、女の勝負らしい」

「へー...」

私がそこに行ったら、変な目で見られるだけだな。



こうして、今受け取りにくる2件を除いて、次からは料金を変えることにした。
一律二万円は辞めました。
オーダーメイドだから、高くはないのかも知れないけど...

帽子の料金を書いた紙(一例)を貼っていると、その時、お客さんが入ってきた。

「ミソラ夫人!」

私が声をかける前に、セカが声を上げた。

「あら、そこにいるのは、ハリーナ様付きの護衛騎士じゃありませんか」

「ミソラ夫人は、帽子を買いに?」

「噂を聞きましてね。自分の理想の帽子に出会える帽子屋だとね」

そう言って、ミソラ夫人は目深にかぶっていた帽子を脱いだ。
すると、なんと東洋系のご婦人でした。

「帽子屋さんも東洋の方ね。この国では少ないわよね」

いくつくらいだろう。50代くらいだろうか。黒髪黒い目のアジアンビューティーだ。

「えっと…どのような帽子をお探しですか?ご希望をお聞きします」

「そうね…」

夫人はふと寂しげな目をして遠くを見つめた。

「思い出の帽子。それに似たものを作ってほしいの」

「思い出の帽子…」

私はおもわず反芻した。

「どんな形とか…ありますか?」

「ツバが大きなキャプリーヌがいいの」

きゃぷりー…????
やばい私、帽子に詳しくないぞ!!

「あ。あの…スケッチブック持ってくるので、イメージを描いていただけると助かります…!」

夫人はペンを渡すと、すらすらとイメージを描いてくれた。

「色は、白です」

「なるほど…」

シルクハット氏よ、聞こえておるか。夫人のイメージ、聞いてたかな?

私はちらりと階段のほうを見る。

夫人は几帳面な性格なのか、だいぶ細かくスケッチしてくれた。

「ありがとうございます。参考にいたします」

そう言ってスケッチブックを受け取り、また3日後に約束をした。
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