• テキストサイズ

シアンの帽子屋さん

第5章 第五話


「…そういうわけで」

何がそういうわけなんだ。このカスハラ野郎は。

「一つ、お前の実力を見せてもらおうと思ってな。オーダーメイドなんだろ、この店」

「はぁ。たいしたことありません、私は」

私は、できれば穏やかに、普通のお客さんしか相手にしたくないのが本音だった。

カスハラにはお帰り願いたかった。

見た目はきれいな顔をした男なのに。
すごくすごく残念な性格だなぁと思った。

「おい、聞いているか。」

「はい、もちろん」

「こちらのお嬢様に似合う帽子が欲しいんだ」

そう言って、一枚の肖像画を渡された。

すごいヒラヒラキラキラのドレスを身にまとった、10歳くらいの女の子

「フランス人形みたいですね」

「ふらんす?」

「あ、なんでもありません。かわいいです」

そういえば異世界だったここ。

「ずいぶん棒読みの賛辞だな。本当に思ってるんだか。客商売してるんだろ。もっと大げさに言えないのか」

「すみません…」

やっぱり私接客業向いてなーい!!!

「似合う、帽子ですか…具体的にイメージとかありませんか?」

「…なんだ、そういうのも考えるんじゃないのか?」

「うーーーん…」

あのシルクハット、どこまで有能なのかしら。
こんなぼんやりした希望でも、帽子はできるのかな?

「ちょっと…ここでお待ちいただけますか?」

そう言って、私の座っていた椅子を差し出した。

「…ああ?」

男は優雅な身のこなしで座った。
ずいぶん身分の高い人なのかもしれない。

とりあえず、お嬢様の肖像画だけお借りして、二階の部屋に行き、シルクハットを机の上に置いた。

「このー、お嬢さんにぃ、似合うやつ出してー!!!」

すると、次々と出るわ出るわ…一個じゃなかった。

「あーー!!もういいですすみませんすみません」

なんとかシルクハットを止めると、私は一階に降りて、カスハラ野郎に言った。

「えーあーはい。できます。三日後また来てください」

「三日??三日???」

「はい」

あ、普通もっと遅いよね!やっちまったな

「じゃあ、また来るからな」

そう言って、店のドアの前に立つと、

「そういえば、名前は?」

と聞かれた。

「シアンです」

「俺はセカ。次から名前で呼べばいい」

「はい」

呼ぶことはないだろう。

/ 19ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp