• テキストサイズ

シアンの帽子屋さん

第3章 第三話


「…おーい、シアン!いる~?」

扉を叩く音に、私は急いでシルクハットをベッドの下に隠し、身づくろいした。

「なんでしょう、レイニーちゃん」

慌てた声になってしまったが、なんとか返事ができた。
その声を聴いて、レイニーちゃんは嬉々として入ってきた。

「ねえ、シアン!お願いがあるの!」

あ~嫌な予感がするぅぅぅぅ

「なんでしょう」

「今度ね、パン屋のパニーと初デートがあって…」

「は、初デート!!!???」

なんとレイニーちゃん!!彼氏持ちだったのか!!

「その時に…!!かぶる帽子が…欲しいの!あの、あの…ヨークさんみたいにいっぱいお金渡せないけど…」

と言って、レイニーちゃんは先ほどからガチャガチャ音を立てていた正体、貯金箱を目の前に突き出した。

「え、そんな…」

受け取れない上、作れないよ…

言いたいけど言い出せず、言葉を飲み込んでいると、レイニーちゃんは、私にスケッチブックを渡してきた。

「こういう帽子!!」

そこに描かれていたのは、ひまわりの装飾がついた茶色のかわいい麦わら帽子だった。

「わー上手。レイニーちゃんに似合いそうだねぇ」

思わずそんな感想が漏れる。

「えへへ…ありがとう。難しかったー」

そう言って頭をかくレイニーちゃん。

なんとかできるものなら、なんとかしたいけども…
私には作れないし…

頭を悩ませていると、ふとあの気配を感じた。
あの気配。金目の男の気配だ。

私は思わず、シルクハットのあるベッドの下を見た。

「え?どうしたの?」

「あ、なんでもない…よ…」

そう言ってごまかした。

そしてスケッチブックだけを置いて、レイニーちゃんは部屋を出て行った。

私はしばらくその場に座ったまま、スケッチブックを眺めていた。

「もしも。もしも、シルクハット。アンタに帽子を作る能力があるのなら…作ってほしい」

ベッドの下に向かって、私は言った。
そして、手を伸ばす。

(重い…)

シルクハットは、また不思議な重みがあった。
そして、不思議なことに、少しだけ大きくなった気がする。

「なんか…ある…」

私は勇気を出して、シルクハットの中に手を入れた。

この感触…
麦わら帽子だ!!!

私は思いっきり引っ張り出すと、そこにはスケッチブックそっくりの麦わら帽子が現れた。

こっわ!!!!
/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp