第3章 第三話
「え?ヨークさんが来てる?」
帽子を渡してから数日後。
私は町を歩き回って、あの私の世界への入り口を探し回っていた。
しかし、まったく見つからず、疲れて広場の噴水の前に座っていると、レイニーちゃんに声をかけられた。
「うん、ヨークさんが、奥さんと来てるよ。
なんか、帽子のお礼が改めてしたいんだって」
「そんなぁ…いいのに」
私は少し困ってしまった。
帽子、どこで手に入れたか聞かれたら…と思うと。
そして、十中八九
「この帽子は、どこで手に入れたのかね?」
と開口一番ヨークさんに聞かれた。
「あ、えっと…はい…」
ひきつった笑いでごまかそうとするも、ヨークさんと奥さんは、私の答えをひたすら待っていた。
でも、ここで答えないと、へんな疑いをもたれてしまうかもしれない…と心配になった。
例えば、盗んだもの…とか。
それだけは嫌だ。
ここを追い出されたら、本当に行くところがなくなっちゃう。
「…私が…作りました」
と、言うしかなかった。
「えーー!すごい!!シアン!!」
レイニーちゃんはキラキラとした目をこちらに向ける。ごめんなさいごめんなさい。
「そうだったのね、すごいわ…」
ヨークさんの奥さんのミアティさんは、緑の装飾の帽子を取り出して、私と見比べて感心している。
「もう、本当に!!これは私の理想なの!!すごいわ、若いのに!!!」
それから皆から大絶賛され、私は生きた心地がしなかった。
「じゃあさ、今度私にも帽子作ってくれる?」
キラキラとした目のまま、レイニーちゃんは私の顔を覗き込んできた。
「え…」
答えに一瞬困ったものの、そんな目の少女の問いにNOとは言えず、うなずくしかなかった。
つらい…
こうして、私はいつの間にか帽子職人と認識されることになった。
はぁぁ~~~
ヨーク夫妻が帰った後、私は盛大にため息をついた。
できもしないことを言ってしまった罪悪感と、今後頼まれたらどうしたらいいかという不安。
私は部屋で、一人机に突っ伏した。
「あ!あの帽子…!」
そう、もとはといえば、あのシルクハットに謎の帽子が入っていたことが原因なのだ。
私はシルクハットを手に取ってみた。
あの不審な重みはない。
あんなことがあった後なので、シルクハットからなんか変なオーラがあふれてくる気がした。