第1章 マグル好きのお嬢様
「ではまずマダム・マルキンの洋装店に行きましょう。すぐ、あっという間に済みますので」
ハーヴィンの言葉に軽く頷いて、ルーアは歩き始めた。
ルーアは、暇があればダイアゴン横丁に来ていたため、誰の案内がなくとも回ることができた。彼女にとってここは、最早庭のようなものだ。
今回も、何のためらいもなく、マダム・マルキンの洋装店につくことができた。
「こんにちは、お嬢ちゃん。ホグワーツなの?」
藤色の服を着た、愛想の良さそうな魔女が話しかけてくる。
「全部ここで揃いますよ。さて、こちらへ」
店の奥の方の踏み台の上に立たされ、藤色の服の魔女__マダム・マルキンが、頭から長いローブを着せかけ、丈を合わせてピンで留め始める。
「ルーア様、向こうでなにか見てきますね」
「何かってなんだよ。っておい! ハーヴィン!!」
ルーアが声荒げ、ハーヴィンの名を叫んだときには、もう姿が見えなくなっていた。
✧ ✧ ✧
「さあ、終わりましたよ」
暫くしてマダム・マルキンが、ルーアに声をかけた。ルーアは軽く頭を下げ、店を出ると、ハーヴィンが店の前で待っている。
「お前、何処行ってたんだよ」
「グリンゴッツに行っておりました」
「ああ、銀行に。全く、一言言えよ」
「あまり大きな声で会話する内容ではないので」
ハーヴィンはそういう所あっさりしているよなあ、とルーアが呟くと、ハーヴィンは少しばかり困ったような表情を見せた。