第1章 マグル好きのお嬢様
「連絡もよこさず勝手に来るなんて、いいご身分だよな、お前」
「当たり前だろう。僕は__」
「ああ、いいいい。どうでもいい。本当、日ごろから悪口やら皮肉やら行ってる奴には、皮肉が通じないのか」
いつも通りの家柄自慢が始まりそうになった所で、ルーアはわざとらしく耳を塞いだ。
こいつの話はいつも長引く。聞いているだけ無駄だ。そう考えたルーアは、ドラコの話を一ミリも聞く素振りを見せない。
「本当、君は可愛くないなあ」
「残念。ドラコ、お前に可愛いと思われても何の得にもなんないから大丈夫」
マルフォイ家当主であるルシウス・マルフォイと、エイベル家当主ルイス・エイベルは、学生時代からの付き合いだという。それ故、ドラコとルーアの2人は思い出せないくらい昔から付き合いがある。
だが、付き合いがると言っても仲が良いというわけではない。犬猿の仲という程ではないが、明らかに親しい仲とは形容できないだろう。
「そんな性格だから友達がいないんじゃないのかい?」
「え、お前って友達じゃないの?」
「なっ」
ルーアはドラコのことを好いてはいない。特別な感情など以ての外だろう。だが、信頼はしていた。何か会ったときに、気兼ねなく相談できる程には。
「んで、何の用なんだ? いきなり家に来て。ママに礼儀を習わなかったのか〜?」
「ああ、忘れていたよ。入学の日だけど、この僕と一緒にいかないかい? 僕と一緒にいたほうが嬉しいだろう?」
「却下」
ルーアにとって、ドラコの厭味ったらしい態度と口調が鼻につく。だから2人で行動するなど考えてもいなかった。
「私、ちゃんと友人を作りたいから。お前と一緒にいるとキチガイ野郎だと思われる」
「は? 何を言って__」
「わかったら帰れって。お前と一緒に行きたいわけ無いだろ」
完全なる拒絶。ルーアは殆ど感情のこもっていない瞳で、ドラコを追い返そうとした。