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音楽室の赤リボン

第1章 零


当然のように源家の敷居をまたぐことになった僕は、そのまま源家で朝食も共にすることになった。光のご飯は美味しいのでそれ自体はありがたいのだけれど、光からの視線が痛くて痛くて。フレンチトースト食べてるだけなのに……。僕が一体何をしたと言うのだろう。光を心配させましたね。ごめん。

僕達の帰宅を玄関で待ち構えてたエプロン姿の光は背中に般若を背負う勢いだった。今はまだ愛らしさが残るけど成長すればその限りでは無いだろう。いつの間に僕の腕から手を離して横でニコニコしてるそこの輝がいい例になってしまっているから。

僕は夜中に1人で家を抜け出したことと朝まで帰らなかったこと、輝は夜中から朝まで1人で僕を探して殆ど寝ていないことについて懇々と怒られた。その場はてぃあらちゃんが起きてきたことで収まったけれど、光──と輝──の怒りはまだ鎮まっていないだろう。帰ってきたらきっと正座コースだ。ごめんって。でも僕もう高校生だしさ、ノートもあるから1人でも外出できるし、そこまで怒らなくてもいいのではなかろうか。……なんて、2人に心配させてばっかりな僕が言えることではないけど。



「あの……何?」

「別に」

「何も無いならガン見するのやめない?あっ今日も美味しかったよ、ごちそうさま」



さっきまでむっすりしていた光の顔が少し緩んだ。褒められると嬉しくなっちゃう素直な光が大好きだよ。今日も朝から癒しをありがとう。流しに重ねたお皿を運んでそのまま洗おうとしたら光に止められた。



「オレが洗うから夢乃は着替えてこいよ」

「え、でも」

「いいから任せとけ!」

「あっはい」



早く支度をするようきつく言いつけられ、一体2人の目に僕は何歳に映っているのだろうと考えながら、お礼を伝えてダイニングを後にする。後ろから聞こえてくる輝と光のなんとも平和な会話に笑いそうになりながら源家を後にした。
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