第1章 零
「さて、夢乃も見つかったことだし帰ろうか。光と姫が起きる前に」
「光って結構早起きだよね?もう起きてるんじゃ」
「……大人しく怒られようね」
「巻き込まないでもらっていい?」
ずっと頭に置かれていた──もしかしたら撫でられていたのかもしれない。気づかなかった。あのほら、隠密行動とかの才能あるよ──手が遂に僕の掴まれていない方の手を握り、腕を掴んでいた手もするすると掌まで降りてきた。なるほど逮捕。もう用事は済んでるから逃げも隠れもしないのだけれど、再三言うが目の前の幼なじみは心配性なのだ。見つかった時ほど強く掴まれてる訳じゃないからいいんだけどさ。
宇宙人に連行される実験体のようになりながら家までの道を歩く。宇宙人に連行される実験体の気持ちがよく分かる。家に着くまでの間僕達の間にこれと言った会話は無かったが、特別気まずい雰囲気になることも無かった。