第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
店内には、夜の仕事終わりと思しき人達が点在していて少し疲れた顔で朝食にはちょっとヘビーと思われるジャンクな食べ物を口にしていた。
「お待たせしましたー」
結構な早さで出来た注文品を受け取り、どこの席がいいかと店内を見渡す。
すると。
「……アイツ……」
見つけてしまったのだ。
店内の端の方の席に座って、やっぱり無表情でポテトを口に入れている繭莉の姿を。
ふと、顔を上げた繭莉と目が合ってしまう。
「っ!」
こちらに気付いた繭莉だったが、特に驚くような表情も見せずにふいっと勝己から視線を逸らして、飲み物のストローに口を付けていた。
「……おい」
勝己は、繭莉の隣の席のテーブルにトレーを置くと、そこの椅子に腰を下ろした。
「おはようございます、爆豪さん。……他にも、たくさん空いてる席ありますけど」
そう言われて、勝己は返答に迷った。
確かに、この時間は空いている席の方が多い。
なのに、どうしてわざわざ繭莉の隣の席に座ったのか。
理由は、なんとなく分かっていた。
わざわざ訊くのもどうかと思ったが、訊きたかったのだ。
繭莉が、どうして免許を持っておきながらヒーローの道を選択しなかったのかを。
「まだ、終わってねんだよ。……こないだの話」
繭莉は、相変わらず無表情でポテトを口に入れている。
「私が、免許持ってるのにヒーローにならなかった理由ですか?」
目の前のものを食べ終わったらしく、紙ナプキンで指を拭いている。
「普通、免許持ったらヒーローになんだろ。その為に勉強したんだからよ」
「……こんな所で、話す事じゃないので」
「あ?」
こんな所で、話す事じゃない?
……どういう事だよ、もったいぶんなよ。
「それ食べたら、時間あります?」
繭莉が、バーガーの入っていた紙を折りながら言った。
「……あっけど、なんだよ」
「お店、来てくれたら……お話します」
ンだよ。
そんなヘビーな話なんか?
やっぱ、ヘンな奴。
そう思いながら、勝己はポテトを口に入れた。