第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
なんだかとんでもなく恥ずかしい気持ちになって、告白しているというのにそっぽを向いてしまう。
「……爆豪さん」
不意に首元に腕を回されて、勝己は思わず繭莉の顔を見た。
至近距離で視線がぶつかって、さっき地震の所為で鳴りを潜めていたはずの胸の高鳴りが蘇る。
もう、目の前の繭莉しか、見えなかった。
「繭莉」
さっきしたのに、まるで初めてするかのようなキスを繭莉にしていた。
「……ん……」
外の喧騒やサイレンの音なんてもう、一切耳に入って来ない。
聞こえてくる繭莉の息遣い、身体の温もり、時々鼻をくすぐる優しい匂い。
自分の身体の感覚が、全て繭莉に持っていかれたような感覚に陥る。
「……は……」
唇を離すと、少しとろっとしてどこか物欲しそうな表情をした繭莉と再び目が合う。
「……私……っ……」
分かってる。
この先どうすればいいかなんて、さっきからずっと分かってる。
勝己は、もうこんな事が初めてだとかどうしようとか恥ずかしいとか、そんな気持ちをかなぐり捨てて繭莉を抱えたままずんずんと早足で歩きだした。
そして、目指していたはずの上鳴の事務所を通り過ぎた。
「あのっ、爆豪さん!どこに……」
「こっから近ぇから、俺の事務所行くぞ」
さっきはついしかけてしまったけれど、さすがに人の事務所でそんな事は出来ない。
勝己は、夢中で自分の事務所を目指して歩き続けた。
「……あ、あの……」
歩いている途中で、繭莉が少し恥ずかしそうに口を開いた。
「降ろして下さい……もう、自分で歩けます」
そう言われて、少し名残惜しいけれど抱きかかえていた彼女の身体を解放して、地面に立たせる。
そして、その目をじっと見つめると恥ずかしそうに視線を逸らされる。
「ちゃんと後、ついてくから……」
「……わぁったよ」
その言葉を信じて、勝己は繭莉の前を歩き続けた。