第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
食事を終えて、2人は店を出た。
繭莉の後をついていきながら、考える。
なんで俺、こんなめんどくせえ事に首突っ込んでんだ?
別に、コイツがなんでヒーローになりたくねぇのかなんてどうでもいいじゃねぇか。
……別、に……
そうは思っていたが、勝己は薄々気付いていた。
話の内容はなんでもいい。話してみたかった。
そして、愛想のない繭莉の表情が動く所を見てみたいのだという事を。
店の前に着くと、繭莉は鍵穴に鍵を差してガチャンと回した。
「……桐人さんには、内緒でお願いします」
そう言われて案内された店内は、しんと静まり返っていた。
「好きな所、座っててください」
荷物をカウンターの席に置くと、繭莉はカウンターの中に入っていった。
それを見ながら、勝己は取りあえずソファー席に座る。
繭莉は、ブレンダーを取り出すとそこに牛乳と砂糖、そしてバニラエッセンスを注いでいく。
「よく考えたら……爆豪さんが初めてかもしれないです」
そして、卵をテーブルの角にコンコンとぶつけ、卵黄を取り出した。
「こんな事、話すの」
材料を混ぜるブレンダーの音が、繭莉の声を少し聞き取りずらくする。
「……ヘンなの」
その呟きは、聞き取れるかどうか分からない程小さい声だった。
「どうぞ」
目の前に出されたのは、優しい黄色の液体が入ったグラス。
「酒入っとんのか」
「いえ、ノンアルコールです。ただの、ミルクセーキ」
朝っぱらから酒じゃなくてよかったと思いながらグラスに口を付けると、ふんわり甘い匂いと優しい甘さが口の中に広がる。
甘ったるいが、意外なもんで美味しいかもしれないと勝己は思った。
「私……本当はヒーローになるつもりでした」
繭莉が、ぽつぽつと話し出した。
繭莉は、ヒーロー科のある高校に通っていた。
将来は、ヒーローになる事を志して日々、授業に打ち込んでいた。
憧れのヒーローに、近づく為に。
「高3の時に、インターンがあったんです。指名されました、子供の頃から憧れだったヒーローに」
その指名を受けた時、心底嬉しかった。
インターンの日を心待ちにしながら、個性を磨き続けた。