第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
「……お前、どう」
そう言いかけた所で、繭莉の手が勝己の額から離れた。
「出来ました」
いつの間にか手当は終わっていたらしい。
「……フロア、戻りましょう」
それだけ言うと繭莉はさっさと立ち上がり、スタッフルームから出て行ってしまった。
……俺、アイツに何訊こうとしたんだ?
いや、分かってる。
どうして、ヒーローにならなかったんだ?
って、訊こうとしちまったんだ。
「……アホくせぇ」
ンな事訊いて、どうすんだよ。
そう思いながら、椅子から立ち上がると勝己もスタッフルームを後にした。
フロアに出ると、警察を呼びに行っていた桐人が戻って来たのだろうか、警察に事情を聞かれる男達と繭莉がいた。
それを横目で見ながら、勝己はぼんやり立ち尽くしていた上鳴に言った。
「おい、金払ったんか」
勝己に突然話しかけられて、上鳴は身体をビクっとさせた。
「……あ、うん」
「じゃあ帰んぞ」
店を出る途中、警察官の会話がうっすらと勝己の耳に入る。
「ショートもそうですけど、氷結ってやっぱすごいですねぇ」
「そうそう、氷結っていってもここまで使いこなせる人、いませんよ」
しかし、いくら褒められても繭莉は喜ばないだろうと勝己は思った。
その理由は分からずじまいだったが、何故かそう思ったのだ。
「……」
最後に、繭莉をチラリと見ると無表情の中にどこか先程感じたほんの少しの寂しさが滲んでいるように見えた。
ヘンな奴。
愛想はねえし、ヒーローみたいな事するクセにヒーローにならねえとか言いやがる。
なんなんだよ……ま、俺には関係ねえけどな。
関係ないと思いつつ、どこか引っかかるものを感じながら勝己は名残惜しそうな上鳴を連れて店を出た。
それから、数日後。
夜の空け始めた繁華街を勝己は歩いていた。
昨夜は、ちょっとした事件で夜通し働いてしまった。
腹、減ったな。
そういえば昨夜から何も食べていない事に気付く。
家に帰る前に何かお腹に入れておこうと思った勝己は、ファストフード店に入った。
夜働くと、何故かジャンクなものが無性に食べたくなる。
そんな勝己の心理は、他の人間も一緒らしい。