第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
なら、誰にこんな芸当が出来るというのか。
まさかと思って繭莉の方を見ると、表情一つ変えずに男達に近づいてくる。
「頭の先まで凍りたいですか?」
その言葉で、この男達を氷漬けにしたのはやっぱり繭莉だと勝己は確信した。
「……い、いや……」
「あの……すいませんっした……」
完璧に戦意喪失した彼らを尻目に、繭莉はカウンターの中にいる桐人に声をかけた。
「桐人さん、警察呼びましょう」
「あ……うん、電話するより交番に呼びに行った方が早いから。ちょっと行ってくるよ」
桐人がそう言って店を出て行くと、上鳴が「ほらね!」と何もしていないのに意気揚々と語りだす。
「繭莉ちゃんの個性!すごくね?いやマジで!氷結ってさぁ、汎用性あるよなぁ!サイドキック、来て欲しいんだって!お願い!」
「お断りします。それより……爆豪さん、でしたっけ」
繭莉が、勝己の額に触れた。
人の手とは思えない冷たい感触に、勝己は眉を顰めた。
「あ?ンだよ」
「怪我、手当てしましょう。……来てください」
そう言われて連れてこられたのは、スタッフルーム。
椅子に座らせられた勝己は、ぐいっと額を手で拭った。
「別にこれくらいどってこたねぇよ」
「これくらいって侮ると、後悔しますよ」
救急箱を開けながら繭莉が言ったが、この程度の怪我なら仕事柄慣れっこの部類に入るので、気にして貰わなくても結構なのだが。
「だから……っつうか……」
「?」
「ヒーロー免許持ってて、個性も派手でよぉ」
「……」
「ヒーローになろうとか、考えねぇんか」
なかなかに突っ込んだ事を聞いてしまっていた。
「……氷結なんていっても、ショートには敵いませんし。なろうなんて、思いませんよ」
「じゃあなんでヒーロー免許持ってんだよ」
「……いいでしょ、別に……動かないで下さいね」
繭莉の手が、勝己の額に触れた。
「ちょっと痛くなりますよ」
「……っつ……」
消毒液と酒の混ざった匂いが鼻を突く。
少しの痛みに耐えながら至近距離の繭莉の顔を見ると、表情は乏しいものの少しだけ寂しさが滲んでいるような……そんな感じがした。
それは、どうしてだろうか?
彼女が頑なにヒーローになりたがらない事と関係があるのだろうか。