第19章 笑わない人が笑った時ってキュンとする(爆豪勝己)
すると、最初に飲んだ時とは違って甘やかな味が口に広がった。
なんだか、慣れればスイスイいけそうな気がする。
……気がするだけだが。
「繭莉ちゃん……サイドキックの話……そんなにダメ?」
「はい。ダメです」
「~~っ……マジかぁ……」
勝己は、仕事に勤しむ繭莉とちびちびヤケ酒をする上鳴を交互に見て思った。
サイドキックになれだのならねぇだの……
もうしょっぱなから断られてんだし、これ以上は平行線じゃねえか。
「……帰んぞ」
もうここにいる理由がない気がしたので、勝己はカクテルグラスをテーブルに置くと席を立った。
「ちょ、爆豪!まだ10分くらいしか経ってないけど?」
「もう断られてんだから無駄だろ」
「そんなぁ……」
上鳴がシュンとしながら財布を取り出したその時だった。
「おい!お前ふざけんなよ!」
「うっせえな!フザけてんのはお前だろ!」
「おい!やめろよ!」
突然、ソファ席で呑んでいた男性グループが口喧嘩を始めたと思ったら、お互いの胸倉を掴み合っている。
これはいつ乱闘騒ぎが起きてもおかしくない。
「け、喧嘩ぁ?」
桐人が困ったように眉を顰めたのを勝己は見逃さなかった。
パンピーの喧嘩を止めるくらい、プロヒーローの勝己や上鳴からしたら朝飯前だ。
「おい」
仲裁に入ろうと勝己が男性の肩を掴んだ。
「邪魔すんな!ひっこんでろや!」
その瞬間、もうヒートアップしてしまっているのか酒の入ったグラスを思い切り投げつけられた。
「っ!」
それが勝己の顔面に当たってパリンと割れた。
頭の先から肩にかけて濡れるし、何より酒臭い。
「……いっつ……!」
額に、生暖かい何かが流れる感触がして、それが血だと気づくのに時間はかからなかった。
「……テメェ……!」
勝己が、本格的にキレそうになったその時だった。
「他のお客様の迷惑になりますので」
繭莉の声と共に、男達は一瞬のうちに肩から下が氷漬けになって身動きが取れなくなっていた。
「わっ!氷!?動けねぇ!」
「マジ、なんっ……ショートでも来てんのかよ!」
身じろぎ一つ出来ずに慌てる男達を見て、勝己はこの場に同級生でありNO.2ヒーローの轟焦凍でも来ているのかと辺りを見回してしまった。
しかし当然だが、彼はいない。