第23章 逢坂くんの夢小説
放課後、僕は文芸部の部室でノートに小説の下書きを書く作業をする。
ゆめは隣の机で宿題をしている。
ゆめが隣からこっそり僕の様子を伺っているのに気づく。
「ん?」
「わからない所があるんだけど…今、聞いても大丈夫?」
彼女が遠慮がちに尋ねる。
「いいよ。どれ?」
僕が答えると、彼女はホッとした感じで微笑む。
「ここの問題…」
「ああ、これはね…」
彼女は部室で宿題をするのが日課になっている。
文芸部に所属はしているけど、小説を書くことはしない。
資料集めの手伝いや、他の部や生徒会との連絡などのマネージャーのような役割を担ってくれている。
文芸部の部員は僕をはじめ社交的とはいえないタイプが多いので、彼女のような明るい子がいると助かる事が多い。
そして彼女は普段は部室で宿題をしている。
僕がいるのでわからない所をすぐ聞けるので便利らしい。
…
「今日はちょっと遅くなっちゃったねー」
ゆめが夕焼け空を仰ぐ。
僕とゆめは一緒に下校する。
まあ、部活が一緒で家も隣なのだから自然な流れだろう。
「そうだね。ちょうどいい時間だから…ちょっと寄り道して行くかい?」
僕は提案する。彼女は少し不思議そうな顔で尋ねる。
「いいけど…。ちょうどいいって…何の時間?」
「ふふ…内緒」
「えーなんだろ。ふふっ」
楽しそうに彼女は笑う。