第23章 逢坂くんの夢小説
「わぁ綺麗…」
僕たちは夕暮れの臨海公園に寄り道した。
橙色に染まった空と、同じ色に染まった海を眺め、彼女は顔を輝かせる。
「日が暮れるまでずっと眺めていようよ」
彼女が僕の顔を見て言う。
彼女の頬も夕焼けに染まっているようだ。
「そうだね。でも…晩ご飯までに帰らないと叱られるかな?」
「もう!子供扱いして…」
僕の言葉に彼女が頬を膨らます。
「わたし…もう17才なんだよ」
「知ってるよ。だって僕も17才だからね」
「そういうんじゃなくてぇ…」
彼女が僕の目をじっとみつめる。
「紘夢って鈍感だよね。なんでわからないのかな…。勉強はあんなにわかるのに」
彼女が不満そうに言う。
僕から言わせてもらえば鈍感なのは彼女の方だ。
「ゆめ…目を閉じてみて?」
「え?なんで?」
僕の言葉に彼女が不思議そうな顔をする。
「言うこと聞いて」
少し不満そうに、だけど素直に目を閉じる。
僕は彼女の唇にそっと口づけする。
……。
そして、そっと唇を離す。
彼女の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
想定外の反応に僕は少し驚く。
「あの…もしかして嫌だった?」
恐る恐る尋ねる。
「バカ」
彼女がうつむいて涙を拭う。
「知ってるくせにっ…。わたしの気持ち…知ってるくせに」
涙目のまま僕の顔をじっとみつめる。
怒った顔も愛らしい。
「でもなんで言葉で言わないの。いつも本ばかり読んでるくせに」
言いがかりをつけられる。僕は答える。
「君には直接的な表現の方がいいと思って…。愛は言葉じゃなくて、態度でしめさないとね」
僕の言葉に彼女が少し微笑む。
「わたしも…」
そう言って、僕にギュッと抱きつく。
僕もそっと彼女の背中に手をまわす。
「…大好きだよ。誰よりも君のことを想ってる」
…
fin……っと。
……。
「ねえねえ、ちょっと教えてもらっていい?」
隣で宿題をしている本物のゆめちゃんが僕に声をかける。
僕はノートを閉じながら返事する。
「いいよ。どれ?」
「あれ?逢坂くん、小説書いてたの?」
ノートを見た彼女が僕に尋ねる。
「うん。ちょっと新しいスタイルに挑戦してみたんだけど…残念ながらこれはボツだね」
「ふーん」
彼女がさほど興味ない感じで相槌をうった。
fin