第19章 夕暮れの観覧車
一日、遊園地で遊びまくって今日は本当に楽しかった。
そろそろ日が暮れ始める。
楽しい一日が終わってしまう。寂しいな。
彼が私の手をそっと握る。
「ゆめちゃん、観覧車に乗ろう」
「え?いいの?」
私は驚いて彼の顔を見る。
「うん。君と乗りたいんだ」
彼がにっこりと微笑む。
「うん!ありがとう!」
私のためにちょっと無理して乗ってくれるんだ。うれしい!
私は繋いだ手を振って歩く。
…
「うわぁ…すごく…キレイ…」
観覧車が半分ぐらいまで上がると、夕暮れの空に吸い込まれていくみたい。
「ふふ…この風景を君に見せたかったんだ」
彼が優しく微笑む。
「そっか…。だから後でって言ってたんだね。逢坂くんありがとう」
向かい合って座っていた彼がそっと移動して私の隣に座る。
私たちは顔を見合わせて微笑み合う。
「見て。もうだいぶ夜が広がってるけど、あそこはまだ夕焼けだよ。あの青い所とオレンジの所の境い目。わたし大好きなの」
私は遠くの空を指差して説明する。
「夕方と夜の境い目…か。素敵だね」
適当にしゃべったことを彼が言葉にしてくれる。
私はとても幸せな気持ちになる。
私は窓の外を眺めながら話を続ける。
「わたしの好きなマンガでね、夕暮れの観覧車のてっぺんで…高校生のカップルがキスするシーンがあってね。なんかそれ思い出しちゃったー。ふふっ」
楽しくて思い出し笑いもしちゃう。
「え……ネタバレ…された…」
彼のつぶやきに私は振り返る。
「え?ネタバレ?あ、そういえば逢坂くんにあれ貸したっけ。でももう最後まで読んだよね?感想も聞いた気が…」
私は首を傾げる。
「いや…そうじゃなくて…。この状況で…普通察しない?
今まさに高校生のカップルが夕暮れの観覧車に乗っているんだけど…」
え?…うーん。あっそうか!
「あ、もしかしてそれを実行しようとしてくれたの?逢坂くん」
「そうだけど…もういいよ…」
彼がすねてそっぽを向く。
私はそんな彼の背中に抱きつく。
「素敵!しようよ!ねぇチューして〜」
後ろから彼の顔をちょっと覗き込む。頬がちょっと赤い。
でも黙り込んで返事してくれない。