第10章 保健体育のお勉強
パーテーションの向こうのベッドから物音が聞こえる。
「おや、そろそろお姫様のお目覚めかな」
若桜先生が様子を伺うようにベッドの方に声をかけると、ジャージ姿のゆめちゃんがパーテーションから顔をだした。
「センセー、今何時ですかぁ?
あれ?逢坂くん…もう授業終わったの?」
「あぁ、うん…。これ…クラスの子にカバン預かってきたから…スポーツバッグに制服入ってる」
「ありがとう。着替えちゃうからちょっと待ってて」
そう言ってゆめちゃんはスポーツバッグを受け取りパーテーションの向こう側に再び消えた。
僕はゆめちゃんの着替えを待ちながらぼんやりとさっき若桜先生に言われたことを考えていた。
(コンドームの避妊率が100%じゃないっていっても…ちゃんと使っていれば大丈夫…だけど絶対大丈夫ってことは世の中にはないかも?でも…)
「何してんの?着替えたよ?行こ?」
制服に着替えたゆめちゃんに声をかけられ我に返る。
「あ…ごめん。考え事してた。帰ろうか」
「じゃあセンセーお世話になりました」
ゆめちゃんが明るく若桜先生に声をかける。
僕以外の男にそんな愛想振りまかなくてもいいのに。
「また遊びに来てね。ゆめちゃん」
若桜先生がチャラく手を振る。
絶対遊びに行ったらダメだ。