第31章 それは内緒
別の日の放課後。
資料を借りに図書館に向かう。
こっそり文芸部の部室の前を通り、中をのぞく。
あれ…いない…なんで…?
もしかして逢坂くん、わたしには忙しいとか言いつつ何か別のことを?
浮気…? いや、逢坂くんに限ってそんな…
「こんにちは、先輩」
ビクッ
もやもやしてると、文芸部の1年女子に声をかけられた。
「こ、こんにちは…わたし、図書館に行く途中で…」
言い訳する。
「あ、逢坂先輩も今、編集作業で図書館に行ってますよ」
1年女子が教えてくれる。
「そうなんだ。べ、別に逢坂くんに会いたいわけじゃないんだけどね。わたしも今からたまたま行くから。ありがとね」
私はウキウキで図書館に向かう。
本当に偶然、図書館に用事があるんだもんねー。
…
図書館に入り、中を見渡す。
机に辞書や原稿用紙をひろげて作業している逢坂くんをみつけた。
私は思わず笑顔になる。
逢坂くんも私をみつけてくれるのを期待して。
……。
彼は作業に集中してるみたいだ。
逢坂くんがわたしに気がつかないなんて…。
ちょっと寂しいな…と思いつつ、私は自分の用事をすませる。
10分ぐらい図書館にいたけど、彼は最後まで私に気がつかないみたいだった。
私は書棚で本を探しながら、ときどき彼の様子を盗み見た。
真剣な彼の表情…素敵。
私は邪魔しないように、そっと図書館を出た。