第31章 それは内緒
もうすぐ文化祭。
私はプログラミング部の展示で脱出ゲームを作ることにした。
今までは自己満足のものを好き勝手に作っていたけど、多数の人に見てもらうものを作るとなると、やはり緊張する。
ところどころ明神くんに手を貸してもらいつつ、ある程度のクオリティのものを作ろうと頑張り中。
一方、逢坂くんも忙しい。
文化祭で配布する文芸誌用の短編執筆と、その文芸誌の編集作業に追われている。
なので、私たちは文化祭が終わるまでデートしないどころか、下校も別々にすることにした。
別々に下校するなんて、一学期にちょっとケンカしてたとき以来。
「寂しい…」
別々に下校を逢坂くんから提案されて、私はつぶやいた。
「大丈夫。文化祭までの間だけだよ。お互いいいものを作るために頑張ろう。
それに僕たちは心の奥で繋がっているよ」
そう言って、彼は私の手をぎゅっと握る。
私は彼の目を見つめて頷いた。
…
放課後、プログラミング室で作業。
ふぅ…疲れた…
今頃、逢坂くんも頑張ってるかな…
ちょっとのぞきに行こうかな…
でも邪魔になっちゃうかもだし…
「佐藤さん、なんだか切ない顔をしていますね。お腹が空いたんですか? ポテトチップスを分けてあげますよ」
もやもやしてると、明神くんに声をかけられた。
「あ…ありがとう…」
別にお腹は空いてないけどポテトチップスをもらう。