第30章 バンビーナ!
「3ポイント」
後ろから、逢坂くんの声が聞こえて振り向く。
逢坂くんはカバンを肩からかけ、廊下の壁にもたれて、腕組みして、こっちを見てる。
「あっ、逢坂くん。帰る準備できたんだ。いつからいたの?」
「君がその男と楽しそうに会話を始めたときからさ。カウントしておいたからね。もうすぐポイントが貯まるよ」
「はぁ? その男…って、鳴海くんは逢坂くんのクラスメイトでしょ? わたしは逢坂くんが円滑にクラス活動出来るように様子を聞いてたの。話を聞いてたんならわかるでしょ?」
「そんなこと頼んでないし、君がそんなことする必要ないだろ」
「わたしは逢坂くんのためを思ってやってるの! だいたい逢坂くんはもう少し広い視野を持っていろんな人と付き合うべき!
鳴海くんともっと親しくなりなよ。鳴海くんは逢坂くんに興味を持ってくれてるよ」
「余計なお世話だよ!」
逢坂くんと少し口論になる。
「おいおい、君たち…。僕のことで争わないでおくれ。
逢坂くん、彼女は君のことをとても深く想ってくれてるんだよ。僕は短い会話の中でそれをしみじみ感じたよ」
鳴海くんが私たちをなだめる。
「はいはい。それはどうも。
そう感じるんなら、これからこの子に気安く話しかけないでくれるかな? じゃあ、さよなら」
逢坂くんが私の腕をつかんで引っ張る。
「引っ張らないでよぉ〜!
じゃあね、鳴海くん。バイバーイ」
私は鳴海くんに手を振る。
「あ、手を振った。ポイント2追加」
逢坂くんがボソッと言う。
「なんで挨拶しただけで2も増えるの!?」
……