第30章 バンビーナ!
今日は逢坂くんの部活がない日。
帰りのホームルームが終わったので、E組の教室に飛んでいく。
私は廊下からE組の様子をのぞく。
E組もホームルームが終わったとこみたい。
「やあ、バンビーナ!」
「あっ、鳴海くん」
演劇部の鳴海くんに声をかけられる。
そういえば、鳴海くんE組だっけ。
「E組に何か用かい?」
鳴海くんが優しく尋ねてくれる。
「うん。逢坂くんと帰る約束してるの」
「なるほど。君は逢坂くんと友達だったんだね」
「んー…友達っていうかぁ…彼女? わたし、逢坂くんと付き合ってるの」
ちょっと恥ずかしくて、ヘラヘラしちゃう。
「へぇ! あの寡黙でミステリアスな逢坂くんに、君のような彼女がいたとはね。彼の意外な一面を知れた気がするよ」
「えっ、ミステリアス? 逢坂くん、クラスでそんなふうに思われているの?」
「いや、これは僕自身の個人的な印象さ。頭が良くて、穏やかで、何でもクールにこなす彼だけど…
内に秘めた情熱というか…独特の雰囲気を感じるんだ」
「わかる! わたしも付き合い始めはそんなふうに思ってたかも。
でもね、仲良くなると、意外と感情豊かで面白い人だよ。冗談のセンスはちょっと変だけど…
あ、鳴海くんと似てるとこもあるかも。
創作に対する一生懸命な姿勢とか…独特の世界観とか…」
「え? 僕と逢坂くんが似ている? そんなふうに思ったことはなかったな。でも、そう言われるとますます逢坂くんに興味がわいてきたよ。
君は彼のことを深く想っているんだね。逢坂くんがうらやましいな」
「やだー。ふふっ」
「ははは」
鳴海くんと楽しく談笑する。
やっぱり逢坂くんに似てるかも。
こんなに話しやすいんだもん。