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逢坂くんの彼女

第28章 わたしにできること


「美術部どうだった?」

帰り道を歩きながら逢坂くんが私に尋ねる。

テンション低い私を気遣って、明るく聞いてくれてるような気がする。

「うん、やっぱり…逢坂くんの言ってた通りというか…。
詩が書けないから絵を描いてみようみたいな単純な考えでやってもしょうがないだろうなと思った…。
今日見た…桑門先輩の絵はもちろんだけど、廣瀬くんの絵も…他の美術部の人の絵も…すごかったし」

私はテンション下がり気味のまま答える。

「難しく考えすぎなんじゃないかな。何かを創るということに対して幻想を抱いているというか…」

逢坂くんが明るく言う。

私を励ましてくれてるんだと思う…けど…。

「逢坂くんにはわからないよ」

「え…?」

「わたしには何もないから」

「え? いや、何もないって…そんなことないよ?」

逢坂くんがちゃんと本心でそう言ってくれてるのはわかるけど…。

「逢坂くんには…わかるわけない…!
逢坂くんには小説があるから…。
わたしには何もない。
スポーツも勉強も特に出来る訳でもないし、絵も描けないし楽器も出来ない。
ゲームとかマンガは好きだけど、そんなに詳しい訳でもない…。
これがあるから生きていけるっていうものがないの…」

私の目に涙がにじんでくる。

こんなことで泣きたくないのに。

「僕がいるよ! ね? …僕が…いる…よね?」

「……」

逢坂くんが私を励ましながら確認する。

確かに逢坂くんがいるから…私の高校生活楽しくなったけど…。

そういうんじゃない気がするというか…。

涙がグズグズ出てくる。
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