第28章 わたしにできること
とりあえず今日は桑門先輩が水彩画を描くのを見学させてもらった。
先輩は話しながら楽しく描きたいからって言ってくれて、私は絵の道具のこととか全然関係ないこともいろいろ聞けて楽しかった。
先輩が描く絵もすごかったし…。
でも…。
「あれ?」
私は入り口の近くの席で廣瀬くんと逢坂くんがワイワイしゃべってるのに気がつく。
あの二人やっぱり仲いいんだ。
そういえば、なんか似てるもんな…。
なんていうか…勘違いしたまま会話が進んでいくところ?
「逢坂くん、文芸部もう終わったの?」
私は逢坂くんに声をかける。
「うん。早く終わったからここで待ってたよ」
廣瀬くんと楽しそうに話していた逢坂くんが私に気付いて答える。
「そっか…。待っててくれてありがとう。帰ろっか…」
「佐藤! 美術部楽しかっただろ? 入部するよな?」
廣瀬くんがニコニコして私に聞く。
「あ…ううん…。楽しかったけど…わたしには無理そうだから…入部はやめとく」
「えーっ? そんな難しく考えなくてもいいと思うけど…。まあ、いつでも遊びに来いよ」
廣瀬くんが明るく言ってくれる。いい人だなぁ。
「いや、やっぱりやめて正解だよ。ここの美術部は男子が多すぎる」
逢坂くんが口を挟む。
「おまえなーそんなちっちゃいことばかり言ってたら彼女に嫌われるぞー」
廣瀬くんが逢坂くんを茶化すように言う。
「小さいことじゃないし。別にそんなことで今さら嫌われないと思う」
逢坂くんは真面目な顔で答える。
「なんかムカつく! ラブラブでいいね!」
廣瀬くんが冗談ぽく怒る。
「じゃあ、またね。今日はいろいろありがとう」
私と逢坂くんは廣瀬くんに手を振って帰った。