第28章 わたしにできること
美術室に見学に行く。
ちょっと緊張するなぁ…。
入り口の近くのイーゼルに立ててある絵に目が止まる。
なんか生き生きしていい感じ。
「いいだろ、それ! なんたってオレが描いたからな!」
絵を眺めてると明るい雰囲気の男子に声をかけられる。
「うん! いい絵だね。えっと…」
美術部の人だよね? 緑のネクタイだから2年…。
「オレは2年C組の廣瀬櫂…って知ってるか。オレのことずっと見てたんだろ? その恋する瞳で…」
あ!この人なんか勘違いしてる!
「え、あ…いやいや…。わたし彼氏いるから…」
私はあわてて否定する。
「うん…。彼氏がいてもそういう気持ちになっちゃうことってあるかもな…。大丈夫! オレは気にしない! 待つよ!」
廣瀬くんが明るく言う。
「えっと…今日は見学に来たの。桑門先輩はいるかな…?」
とりあえずスルーしとこう。
「え…桑門先輩の彼女…? それはさすがにヤバイか…」
それも勘違いだけど、都合良さそうだからそのままにしとくかな…。
「僕の彼女なんだけど」
突然、廊下から逢坂くんが声をかける。いつからいたの?
「…逢坂くん、なんでいるの?」
私は率直な疑問をぶつける。逢坂くんは答える。
「図書館に資料を借りに行くところ。たまたま通りがかっただけ」
遠回りじゃないかな…。
「なんだ、逢坂の彼女か。なら大丈夫! オレに乗り換えていいよ!」
廣瀬くんが明るく言う。めっちゃポジティブだなぁ、この人。
「は? 何だよ、それ」
逢坂くんが突っ込む。
「こんな根暗ヤローより、オレと付き合った方が楽しいと思うけどなー」
「僕は根暗じゃない。廣瀬がチャラいだけだ」
逢坂くんと廣瀬くんがじゃれあってケンカしてる。
この二人もしかして仲良し?
「あ、ゆめちゃん。もう来てたんだ。準備出来てるよ。あっちに」
桑門先輩が奥の方から声をかけてくれた。
「ハイ! じゃあわたし行ってくるね。逢坂くん、後でね」
私は逢坂くんと廣瀬くんを置いて逃げた。