第28章 わたしにできること
詩…恋する気持ち…。
とりあえず机の前に座る。
恋する気持ちがあれば書けるはずだよ!…って逢坂くん言ってたけど…。
……。
何も思い浮かばない…。
恋する気持ちはあるはずなんだけど…。
あるはず…。ある…よね…。
あれ?もしかしてないのかな?
…なんか自信なくなってきた。
寝よ。
…
翌朝。
「おはよう!」
いつもの公園で逢坂くんがニコニコ挨拶する。
あれは…何か期待してる顔だ。何を期待してるのかもわかるけど…。
「お…おはよう…」
とりあえず返事する。
「詩は書けたかな? 恋する女の子の詩は…」
彼が引き続きニコニコしながら私に尋ねる。
「え、えっと…。あはは…。わたし向いてないみたい。ポエム…」
笑ってごまかす私。
「そう…」
逢坂くんがガッカリする。
「まあ、女の子だからってみんながみんな詩を書くわけじゃないよね…。
僕だって男だけど野球にはそんなに興味がないよ…」
彼が私を励ましてくれる。
いやもしかしたら自分を励ましてるのかも?
私は思いついた別のことを話してみる。
「わたし今度、美術部見学しに行ってみようかなぁ」
「はぁ? 美術部ぅ? ど、どうして?」
逢坂くんがびっくりした様子で聞き返す。そんなにびっくりする?
「桑門先輩に一度見においでって誘われてるし…」
私はちょっと遠慮がちに答える。
「桑門先輩…」
逢坂くんが不機嫌な声でつぶやく。
あ、やっぱりそこ引っかかる?
「ダメかなぁ?」
ちょっと彼の様子をチラチラ伺ってみる。
彼はちょっとため息をつく。
そしてこっちを見ないで話す。
「…別に。だいたい君は僕がダメって言って何かをやめるような人じゃないでしょ。
まあ…詩が書けないから絵を描こうっていう単純な気持ちで始めて上手くいくとは思えないけどね…」
か…感じ悪ぅ…。