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逢坂くんの彼女

第28章 わたしにできること


「うーん…最後の主人公の独白がまわりくどくて、よくわからなかったけど…面白かったよ」

私は逢坂くんのノートに書かれた小説の下書きを読んで感想を述べた。

「えっ…よくわからなかった? そっか…直さないと」

逢坂くんが私が返したノートを受け取って首をひねる。

「あっ、でもわたしだからよくわからないだけかも。文芸部の人に読んでもらったほうがいいんじゃない?」

私はあわてて言う。彼はにっこり微笑む。

「いや、まあ文芸部の部員にももちろん見てもらうけど、部員同士だと技巧の批評に走りがちだからね。ゆめちゃんのように素直な感想を言ってもらえると助かるよ」

「ふーん」

確かに面倒そうな人多いもんね、文芸部。逢坂くんもだけど。

「それに…」

ちょっと恥ずかしそうに彼が頬を赤らめる。

「僕の物語は…君の物語だから…、君に伝わらないと意味がないというか…僕は君がいるから小説が書けるんだよ」

そう言って彼はふふっと笑う。

「いいなぁ」

私は思わずつぶやく。

「えっ?」

「そんなふうに何かを作るっていいな。何か自分にしか作れないものをわたしも作ってみたい…」

私は日々、逢坂くんを見て感じていたことをつぶやく。

逢坂くんは嬉しそうな顔をする。

「うん!やっぱりゆめちゃんも今からでも文芸部に入るといいよ。僕が小説の書き方を教えてあげる」

なんか張り切ってる。

私はあわてて否定する。

「いやいや…小説とかわたし絶対書けないから…。
わたし本を読むのは子供の頃から大好きなのに、読書感想文書くのは超苦手だったもん…」

「ふむ…。あ!じゃあまず詩を書いてみたら?女の子はみんな書くでしよ?ポエムを。
恋する気持ちを…僕に恋する気持ちをしたためてみて!」

逢坂くんが期待を込めた目で私に話す。

え…。女の子はみんな…書くの?

こ、恋する気持ちを…。

「とりあえず明日までに何か書いてきてみてね」

逢坂くんに期限を切られて、詩を書いてくることになってしまった。

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