第26章 七夕
「ねぇねぇ、カップルコンテスト見に行く?ていうか出ちゃう?」
気を取り直して、私はテンション上げていく。
「…織姫彦星コンテスト?見に行くのはまあいいけど出るのは絶対に嫌だ」
逢坂くんは相変わらずのローテンションのまま答える。
私だって本当に出たいと思ってるわけじゃないけどぉ。
私もテンション急降下してきた。
「…逢坂くん、わたしと付き合ってるって周りに知られるの恥ずかしいの?」
ちょっと言いがかりをつける。
「え?そんなわけないよ。もっとみんなに知らしめるべきだと思う」
彼が真顔で答える。
「コンテストに出たらみんなに知ってもらえるよ。別に優勝しなくても」
私の言葉に彼がハッとした顔をしてつぶやく。
「そうか…。そんな手があったか…。でも駄目だ…。織姫彦星だけは絶対に駄目!縁起が悪い!」
「……?」
理解出来なくて首を傾げる私に彼が言う。
「一年に一度しか会えないんだよ?そんなこと耐えられる?僕には絶対に無理だ!一年に一度しか君に会えないなんて!」
…想像以上のロマンティック!
私の胸がキュンとする。
「もし僕が彦星だったら…短冊に浮ついた願い事を書いたり、カップルコンテストに出るようなチャラチャラしたカップルには呪いをかけるね…」
…怖い!想像以上に怖い!
「気づかなかったんだ、今年まで。彦星と織姫の話がこんなに悲しいなんて」
彼が憂いを帯びた瞳をそっと伏せる。
涙…はさすがに落ちなかった。
でも、なんていうかそんな他人事?でテンション下げられてもなぁ。
せっかく夜に学校で堂々とデート出来るっていうのに。
まあいいや。
「日も暮れてきたし屋上でも行く?」
私は彼に提案する。
「…そうだね。星が見えるかもしれないね」
彼が顔を上げて答えた。