第26章 七夕
イベント好きの藤城学園では七夕祭りを開催中。
「わぁ見て。大きい笹がいっぱい。逢坂くん、一緒に短冊書こうよ」
学校のお祭りでデート気分を味わえて、私はテンションが上がる。
ちょっと恥ずかしいけど、こういうイベントで一緒に過ごしてると学校の人にカップルとして認識されるっていうか、やだー。
「あぁ…うん。書こうか」
いつもよりテンション低めのリアクションの逢坂くん。
やっぱり恥ずかしいのかな、こういうの。意外と男子?
短冊に何書こうかな。
“逢坂くんとずっといられますように”
いや、さすがに名指しで書かれたら恥ずかしいかな。
“ずっと一緒にいられますように”
ぐらいにしておくかな。どうしようかなー。
逢坂くんは何書くのかな。チラッ
「あれ?逢坂くん、もう書き終わったの?」
「うん」
逢坂くんが私に短冊を見せてくれる。
“成績が上がりますように 逢坂紘夢”
……。
浮かれてたのは私だけ…っていうか、逢坂くん既に成績いいし。なんか腹立つ。
「ゆめちゃん、まだ書いてないの?僕が書いてあげる」
そう言って、彼は私の短冊を取り上げてサラサラと書き込む。
“因数分解が理解出来ますように 佐藤ゆめ”
……。
「因数分解ぐらいわかるもん!中学生の時に習ったんだから!」
私は抗議する。
「いや…その辺りからやり直した方がいいと思うんだ。見ていてそう思う」
う…毎日のように勉強を見てくれている人がそういうのならそうなのかもしれない…。
ていうか、逢坂くんてもっとロマンティックな人だと思ってたんだけどな。
彼が私たちの色気も何もない短冊を笹に飾ってくれる。