第115章 君は誰…冨岡義勇【R微】
あの日交わした口づけは、ずっと押し殺していた俺の感情に一気に火をつけてしまった。
遠慮や配慮などという生ぬるい心構えは、もう綺麗さっぱり捨て去っていた。
あの涙を見せられた以上、一刻たりとも離れていたくはなかった。
少しずつ体調を取り戻しつつあるものの、まだ全快とは言えないゆきの部屋に、俺はそれ以来ずっと入り浸るようになった。
当然、赤子に授乳する時ばかりは遠慮して席を外したが、それ以外の刻はただひたすらに、ゆきの傍らで過ごした。
やがて、すやすやと穏やかな寝息を立て始めた《空そら》を小さな布団に寝かせると、俺は決まってゆきを後ろから強く抱きしめる。
「んっ……はっ……」
微かな吐息が零れ落ちる隙すら与えず、唇を激しく奪う。
重なる音と熱が、部屋を満たしていく。
産後まだ二週間ほどしか経っていないゆきの体を、深く求めるような真似は絶対にしない。
どれほど強く望もうと、そこだけは理性を保たねばならない。
だが…この愛おしい唇だけは、間違いなく俺のものだ。
他の誰にも渡したくはない。
「んっ…あっ…ぎ、ぎゆ…さん…くる…しっ…」
胸元で呼吸を乱しながら、細い手が俺の衣を弱々しく掴む。
苦しさに揺れる瞳と、熱を帯びて赤く潤んだ唇。その艶やかな姿が、俺の独占欲をどこまでも突き動かす…。
ほんの少しだけ隙間を作り、息を吸わせるように優しく重なる熱を解いてやる。
「すまない…毎日こうしないと気が済まないんだ…。お前が離れていきそうで。」
甘い声で囁きながら、小さな顔を両手で挟み込み、涙で濡れた目元や頬、そして再びその唇へと、愛おしさを確かめるように何度も口づけを落とした。
時透に似たあの子の面影をどこかで感じながらも、俺の腕の中で熱い息を吐くゆきは、今この瞬間、間違いなく俺だけのものだった。
ゆきは、義勇に求められながらも目を閉じると脳裏に浮かぶのは…無一郎の優しい笑顔だった…。
もう…会えないの…?
生きてはないないの?
無一郎くん…