第115章 君は誰…冨岡義勇【R微】
それから時は流れ、空が生まれてからひと月が過ぎようとしていた。
すくすくと育つ空の瞳や顔立ちは、日に日に無一郎に瓜二つになっていく。
面影を重ねるたび胸が締め付けられながらも、ゆきはただひたすらに空を愛で、毎日べったりと寄り添っていた。
そんなゆきの姿を静かに見守っていた義勇は、ある日ふと思い立ったように声をかけてきた。
「ゆき、気分転換に川辺に行かないか?」
突然の誘いに、ゆきは思わず言葉を詰まらせる。
「でも…空が…」
「空は幸に見てもらえばいい。…たまには、二人で出かけないか?」
小さく首を傾げて悩むゆきに、義勇は少しだけ困ったように眉を下げ、愛おしさと切なさが混ざり合った瞳でゆきを見つめた。
「ゆき…俺が、二人きりになりたいんだ。子供じみたことを言ってすまない。忘れてくれ…」
そのまっすぐで不器用な言葉が胸に刺さる。
ずっと義勇さんの屋敷でお世話になり、彼に守られ続けている身だ。それなのに自分の都合や過去の傷ばかりに捉われ、彼を置き去りにするのはいけないのではないか。
申し訳なさと感謝が交錯し、ゆきは静かに頷いた。
「…はい。一緒に行きます」
諦めていた義勇の顔が、ぱっと明るくなった。
そうして二人は、街の外れにある小さな川辺へと向かった。
心地よい風が吹き抜ける水辺の木陰で、持参した竹の籠を開く。
中に詰めてきたのは、ゆきが今朝作っておいたお団子だ。
「上手にできたな」
「義勇さんのお口に合うといいのですが…」
木漏れ日の中で柔らかく笑う義勇さんの隣で、私はお団子を差し出しながら静かに息をついた。
穏やかな水の音と温かな日差しが、張り詰めていた心を少しずつ解かしていく…。
だが、静かな時のなかで義勇さんの手が私の手に重ねられると、あの熱い口づけの記憶と、胸の奥に眠る無一郎くんの笑顔が再び鮮明に交差した。
義勇さんの優しさに包まれながらも、私の心は未だに深い海を漂っているようだった…。
お団子…無一郎くんの屋敷でよく作ってあげた。
無一郎くんを想うといつも目頭が熱くなる。泣いちゃ駄目…
我慢しなくちゃ…
ゆきは、涙を隠すように義勇に告げる
「あっちの方にお花が咲いているから摘んできます。」