第115章 君は誰…冨岡義勇【R微】
ゆきには無一郎の居場所がわかったことは伏せられた。
幸には義勇からすべてを打ち明けたが、今のゆきの心身を思えば、伏せておくのが懸命だという意見で二人 も一致していた。
出産から一週間
義勇は余計な気遣いから、ゆきの部屋へ足を運ぶのを控えていた。
自分の存在が彼女に無用の負担をかけるのではないかと気にしていたのだった。
そんなある日のこと
「師範!」
自室で静かに読書をしていた義勇のもとへ、幸が飛び込んできた。
「いつまでも、師範と呼ばなくとも…」
「私にとってはずっと師範です。それより…ゆきさんが、師範はなぜ顔を出してくれないのかと寂しがっていますよ」
思いもよらない言葉に、義勇は目を見開いた。
「えっ…?」
「あんなに毎日べたべたしていたのに、そりゃ不安になりますよ。ゆきさん嫌われちゃったんじゃないかって、ずっと気にしています」
「ま、まさか! 嫌いなはずがない…!」
動揺を隠せない義勇に対し、幸は少し意地悪な笑みを浮かべて畳みかける。
「寂しそうにされていたので、今日も私が代わりに抱きしめてあげました。明日は口づけもしようかと考えています。」
義勇は手にしていた本をそのまま置き、慌てて立ち上がると、急ぎ足でゆきの部屋へと向かった。
障子の前で呼吸を整え、そっと開ける。そこには、赤子を優しく抱くゆきの姿があった。
「…ゆき」
名前を呼ぶと、ゆきは驚いたように顔を上げた。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「義勇さん…時期を見てここを出ていきますね。やっぱり迷惑ですよね…この子も私も…。出て行くまでもう少し待っ…」
「違う!迷惑なわけがない!」
義勇は言葉を遮るようにゆきのもとへ歩み寄ると、彼女と小さな赤子を包み込むように、優しく抱きしめた。
「迷惑なわけがない……ただ、お前の体を気遣っていただけだ。寂しい思いをさせて、すまない」
ゆきは、もう気持ちが迷子になっていた…
子を産んで不安な今は…義勇の優しさがひどく恋しくなっていた。
「久し振りに口づけがしたい…いいか?」
ゆきは、何も言わず目を閉じた。
時透に、よく似た赤子を胸に抱くゆきに俺は、唇を重ねる。