第3章 反逆の刃を空にかざす
音の発生源を見ると、そこには巨大な岩を持ち上げたエレンが壁に向かって歩いていた。
エレンの巨体が、太陽を遮る影を落とし、岩の重みが地響きを生む。
汗と血にまみれた彼の姿が、希望と絶望の狭間で輝く。
「副長、ミカサ!」
アルミンは立体機動を使ってこっちに来た。
ワイヤーの音が空を切り、急いでこっちに来たせいで息が荒かったが、興奮した様子で私たちに話し続ける。
アルミンの瞳が輝き、頰が紅潮している。
勝利の予感が、彼を駆り立てる。
「エレンが勝ったんだ!今、自分の責任を果たそうとしている!
後はエレンを扉まで援護すれば僕達の勝ちだ!」
人類の勝利が、見えてきた。
胸に熱いものが込み上げる。
長年の闘いが、ようやく実を結ぶ瞬間。
エレンが動いている姿を見たイアンは、意を決し声を張り上げた。
イアンの声が、戦場に響き渡り、兵士たちの士気を奮い立たせる。
「死守せよ!我々の命を引き換えにしてでもエレンを扉まで守れ!絶対に巨人を近付けるな!」
その言葉を聞いた精鋭班達は“了解”と応え、邪魔をする巨人たちに向かって走り出した。
剣が抜かれる音、足音の乱れが、決戦の始まりを告げる。
私も扉から入ってきた5体の巨人を迎え撃つため、そちらに飛ぼうとした。
巨人の影が迫り、咆哮が耳を劈く。
体が自動的に反応し、立体機動装置のレバーを握る。
「お前達三人はエレンの元へ迎え!これは命令だ!」
「…了解!」
イアンの命令が、迷いを断ち切る。
私たち三人は、エレンの側へ。
心に決意を刻み、風を切って飛ぶ。
勝利への道が、開かれようとしている。
別の方向に目を向けると、ミタビ率いる班が地上を駆けていた。
(なにを…?)
彼らの表情には恐怖と決意が交錯している。
「巨人が俺達に食いつかないんだ!食いつかれるまで接近するしか無い!」
兵士たちは恐怖を振り切り、巨人の目の前まで走り込む。
巨人たちの視線を煽るように、声を張り上げる。