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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


「ごめん、状況は?」


「今、アルミンがエレンを起こしています」



ミカサの声は落ち着いているが、瞳に潜む焦りが感じ取れる。


どうやら、あの赤い煙弾を見て急いでこちらに来たようだ。

煙の残り香が鼻を刺激し、戦場の混乱を思い起こさせる。


ここからだとその様子は分からないが、アルミンは己の役目を果たそうとしている。


アルミンの賢明な判断が、希望の糸のように繋がっている。
エレンの力が鍵だという確信が、胸に湧く。



「副長、顔色が悪いです」


「いや、大丈夫」



私のことを心配してくれているミカサには申し訳ないが、今は自分の体調のことを考えている暇などない。

体は何とか動かせるが、それでも頭を働かせていないと今にでもふらついてまた倒れてしまいそうだ。


疲労が骨の髄まで染み込み、視界が時折揺らぐ。

戦いの重圧が、肩にのしかかる。


ミカサの存在が、唯一の支えのように感じる。



すぐ近くに目を向けると、先程私のことを心配して声を掛けてきてくれた精鋭班の手首が落ちていた。


血まみれの断面が、残酷に現実を突きつける。

それを見るだけで、後悔の念に押しつぶされてしまいそうになる。


失われた命の重さ、助けられなかった無力感が、胸を締め付ける。

指先が震え、涙が込み上げるのを堪える。



私は亡くなった兵士を撫で、巨人に再び潰されないよう端っこの方に置く。


冷たくなった肌に触れ、静かな祈りを捧げる。



【決して、無駄死になんかさせない】 心の中で誓う。



仲間たちの犠牲が、未来を照らす灯火になるよう。

その行動を、ミカサはただ黙って眺めていた。


彼女の沈黙が、共有する悲しみを語る。
瞳に映る私の姿が、彼女の決意を強める。



「待たせてごめん。作戦に戻ろう」


「はい」



そう言った時、地面から激しい地響きがした。


それは先程感じたものとはまったく違ったもので、まるで、何かとても重いものを運んでいるかのような。


土煙が舞い上がり、振動が足元から体全体を震わせる。

空気が圧迫され、緊張が一気に高まる。
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