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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


“強者が、弱者を助けなければならない” そう言い始めたのは、誰だったのか。



前の壁外調査後に放った言葉か、幼い頃の記憶か、父の言葉か。

いずれにせよ、それが私の信条。
なのに、今は体が裏切る。



部下が私を“副兵長、副長!”と言ってくれるから、その声に、応えたいと思う。

信頼のこもった呼びかけが、温かく胸に染みる。


だけど動かない。


体にあるあちこちの傷がジクジクと痛む。


切り傷が熱を持ち、血が滲む感触が不快だ。
それに、屋根の上から落ちた時に体を強く打ち付けたせいで、全身が痛い。


骨が軋むような鈍痛が、四肢を蝕む。


血の雨が降り注ぎ、大きな影が私を覆い隠す。
巨人の影が、太陽を遮り、周囲を闇に染める。


息が詰まり、絶望が心を覆う。

巨人の吐息が熱く、腐敗した臭いが鼻を襲う。


終わりか、と一瞬思う。



「副長!」



凛とした声が聞こえる。

その瞬間、私に覆い被さっていた影が消え、私の心の影も消え去った。



「ミ…カサ」


「大丈夫ですかっ」



ミカサの声が、霧のようにぼんやりした意識を切り裂く。


彼女の黒い髪が風に揺れ、鋭い瞳が私の顔を覗き込む。
さっきまで私の近くにいた巨人をすぐさま討伐したようだ。


巨人の巨体が崩れ落ちる鈍い音が、まだ耳に残っている。

血の臭いが濃くなり、地面に広がる巨人の蒸気が視界を霞ませる。



地面に倒れていた私の上半身を浮かすように持ち上げ、顔色を確認してくる。


ミカサの腕の力が、温かく頼もしい。

彼女の指先が私の頰に触れ、冷え切った肌の感触が、彼女の心配を伝えてくる。


さっきまで動かないと思っていた足も、今はもう動かせるようになった。

まるでミカサの存在が、麻痺した体に火を灯したようだ。


筋肉が震え、痛みが走るが、ようやく自由が戻ってきた。



そのままミカサの補助を受けながらもなんとか立ち上がる。

足元がふらつき、瓦礫が足に絡まる。


周囲の空気は熱く、重く、巨人の咆哮が遠くで反響する。

ミカサの視線が、私の体を支えながらも、警戒を緩めない。
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