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【進撃の巨人】救世の翼【加筆修正完了】

第3章 反逆の刃を空にかざす


(今はそんなこと、考えているべきじゃないだろう)



心の奥底で、理性が叱咤する。
なのに、ネガティブな渦に飲み込まれていく。




今でも十分他の兵士と比べたらとても強いだろう。


だけど、リヴァイには及ばない。

リヴァイの動きを思い浮かべる。
あの流れるような剣さばき、巨人の首を刈る瞬間の冷徹な目。

私の力は、それに比べて鈍く、粗い。




他の兵士と比べたら頭だって良い方だ。


だけど、エルヴィンにも及ばない。

エルヴィンの戦略的な視野、未来を見据える鋭い洞察。


私にはそれが欠けている。
二人みたいな、二つの能力が合わさった感じで、この世を生きていきたいと常に思う。


羨望が胸を焼く。


なぜ私は、完璧じゃないのか。
故郷に帰ることを夢見るのに、こんな弱さでどうする。



(早く足を動かせ、君が変な事を考えているときにも、他の兵士は犠牲になって戦っている)



内なる声が、鞭のように自分を叩く。

巨人の咆哮が近づき、地響きが体を震わせる。


あの強さも、キレの良さもあれば、もっと役に立てるのに。
無力感が、涙を誘う。



誰かの悲鳴の声が聞こえる気がする。


鋭く、絶望的な叫びが風に乗り、胸を抉る。

地響きが地面越しから伝わってくる。


巨人の足音が、鼓動のように脈打つ。
恐怖が体を硬直させる。



(君の悪いところだ、弱っている時はいつもネガティブなことばかり考えている)



自己嫌悪が渦巻く。
なぜ今、こんな思考に囚われるのか。



「副長、大丈夫ですか?!」



誰かの声が、遠くから響く。

心配と焦りが混じったトーンが、心を揺さぶる。


大丈夫だ、と言いたいけど、口を動かすことは出来ない。

それよりも、変な事に気を取られているからだ。


頭の中で考える、考える。
過去の失敗、失った命、未来の不安が、嵐のように回転する。



(早く動け、なに可哀想な私だと思っている)



自嘲が胸を刺す。

すぐ近くで骨が折れる生々しい音が聞こえてくる。


乾いた裂ける音が、耳にこびりつく。
そして、痛い痛いと叫ぶ声。


苦痛に満ちた叫びが、魂を震わせる。


いつもの私なら、その声を聞いただけですぐ動けた。
体が自動的に反応し、助けに向かうはずだ。
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