第3章 反逆の刃を空にかざす
しかも、人がその場で喰べられたのか血溜まりの所に落ちてしまった。
生温かい血の海が私の服を染め、肌にねばつく感触が吐き気を催す。
視界の端で、巨人の足跡が地面を抉り、土煙が舞い上がるのが見えた。
あの巨大な影が近づいてくる気配が、背筋を凍らせる。
荒い息遣いが聞こえる。
これは、私の…?
胸が激しく上下し、心臓の鼓動が耳元で鳴り響く。
息が乱れているのは、巨人の足音と同期しているかのようだ。
恐怖ではなく、積み重なった疲労が体を蝕んでいる。
戦いの連続で、筋肉は火のように熱く、なのに力が入らない。
まるで体が反旗を翻している。
いつの間にか疲労が溜まっていたのか。
汗が額を伝い、目に入って視界をぼやけさせる。
息を吸うたび、血と土の混じった空気が肺を刺す。
早く動かないと、ここにいたら巨人に喰べられてしまう。
巨人の吐息が風に乗って届き、腐った肉の臭いが鼻を突く。
想像するだけで、胃が捩れる。
まぁ、喰べられても腹の中引き裂いて出てきたらどうにかなるんだけど、そんな場面他の兵士に見られたら大変だ。
あまり多くの人に私の秘密を露呈されたくない。
胸を締め付ける。
みんな命懸けで戦っている。
遠くから聞こえる剣戟の音、立体機動装置のワイヤーが空を切る鋭い響き。
それなのに、私はここで横たわっている。
罪悪感が波のように押し寄せ、喉を詰まらせる。
だから、早く立ってくれ。
そう願っているのに自分の足は言う事を聞いてくれなくて、腹が立って拳を地面に叩きつける。
拳が血溜まりに沈み、痛みが電撃のように走る。
その際に血飛沫が舞ってしまい、頬に飛び散ってしまう。
温かく粘つく感触が、頰を伝う。
嗚呼、このまま眠ってしまいたい。
瞼が重く、闇が誘うように広がる。
ずっと動いているせいで、疲労がすごい溜まっているんだ。
体が休息を求め、思考が霧のようにぼんやりする。
戦いの記憶がフラッシュバックし、失った仲間たちの顔が浮かぶ。
あの笑顔が、今は永遠に失われた。