第3章 反逆の刃を空にかざす
ミカサもそのことに気付いたのか、息が詰まる音が聞こえた。
破損した部分が修復されてない…以前の損傷が原因か?
「なんで…エレンへの影響は、そもそも元の姿に戻れる保証は?!」
エレンに何か良くない事が起きていると思ってしまったミカサは、取り乱してしまう。
声は震え、瞳は必死に答えを探している。
「落ち着いて。私達が考えても今は原因を究明することは出来ない。とにかく、私たちも早く作戦に戻ろう」
ミカサは不安そうな顔をしながらも、頷いた。
その小さな頷きに、焦燥とも覚悟ともつかない感情が滲む。
戦場特有の血の匂いと、そこら中から悲鳴が聞こえてくる。
空気は乾き、緊張で肌がひんやりとする。
立体機動のワイヤーを見つけた巨人は、屋根の上にいたミタビを見つけ、嬉しそうな顔を浮かべる。
その気色悪い笑みは、人間の恐怖を喜ぶ獣そのものだ。
その顔を見て、ミタビは一瞬体を固くする。
目にほんの少しだけ恐怖が映る。
そのまま巨人はミタビを捕まえようと手を伸ばしたが…。
私がすぐ巨人を倒した。
刃が光り、筋肉が裂ける音が耳に刺さる。
動作は無駄なく、短く、容赦がない。
そのままミタビの居る屋根に着地し、巨人が倒れた衝撃で頭をどこかにぶつけたらしいミタビ。
彼は立ち上がる代わりに、ふらりと座り込むように見えた。
息が荒く、顔に血の気が戻らない。
「不味いぞ、後ろだ!」
その声に私は即座に後ろを向く。反射が体を動かさせる。
どうやら、13m級が一体、エレンに向かって接近しているようだ。
その巨体の影が地面を滑り、空気が重く圧し掛かる。
恐らく、ミカサや他の兵士達が対処するだろう。
そう思っていたが、次の言葉で私の胸は冷たくなった。