第3章 反逆の刃を空にかざす
(この子、兵団に入った後もエレンのためとか言って暴力事件とかを起こさないといいんだけど…)
心の奥で少しだけ、そう思う。
「当初の作戦通り自由に動くんだ!その方がお前の力が発揮されるだろう」
イアンの言葉に、ミカサは覇気を取り戻し、きっぱりと「はいッ」と答えた。
「副兵士長も、ありがとうございました」
「敬語はいらない」
ミタビが私に対してとっていた態度で十分なのに、つい口に出してしまった。
イアンは少し戸惑いながらも、口を開く。
「……とても助かった。俺だけの説得じゃアイツらは納得しなかっただろうから」
「私が言いたいことを言っただけだから気にしなくていい。
ちなみに、実践経験は初めて?」
「…全体の指揮を取ったりするのは初めてだが」
イアンの疑問は、困惑と好奇心が混ざった目に表れている。
「そうなんだ、別に気にしないで」
私の言葉に怪訝そうにしながらも、イアンはミカサの方へ視線を向ける。
「恋人を守るためなら、頑張れよ。アッカーマン」
少し微笑むように言うイアンに、私は思わず軽く「…へぇ」と返す。
「……家族です」
ミカサは頬を赤く染めて言った。
その小さな告白に、戦場の緊張と不安の隙間に、ほんの一瞬だけ柔らかな光が差し込む。
ミカサの反応を面白がるように見て、イアンも二人に次いで行ってしまった。
(本当に、恋人同士なのだろうか…)
そう思いながらも、私はエレンがいるであろう方向に目を向けた。
しかし、あり得ない光景がそこには広がっていた。