第3章 反逆の刃を空にかざす
5年振りに壁が破壊され、人類存続の危機が迫っている。
街の住民を守るため、無駄死にさせないためにも、そろそろ決断をする時だ。
私たちは、悪魔になるしかないのだ。
「後ろの12m級は私の班に任せて!」
リコは力強く言うと、巨人がいる方向へと走り出した。
続いてミタビもそれに続く。
二人の背中には、覚悟と緊張が漂っている。
残された私たちは、少し静寂に包まれる。
戦場の空気が一瞬だけ凍りついたようだった。
その後を追うように、今まで黙って少し離れた所にいたミカサが、私たちの方へと寄ってくる。
瞳の奥に、さっきまでの殺意の色は薄れ、少し安堵と緊張が混ざった表情を見せていた。
「ありがとうございます、イアン班長、副長」
「アッカーマン、礼には及ばない」
言葉は短いが、背中の緊張が少しほぐれたのが分かる。
「君が何をやり出すかずっとヒヤヒヤしていたけど、まぁいい」
本当に、何も起こらなくて良かった。
さっきのミカサの瞳は、本気で人を殺しそうな鋭さを持っていた。
だからこそ、彼女の動きに一瞬でも心が凍るのを感じたのだ。
私の言葉を聞いて自分の行動に心当たりがあったのか、
ミカサは申し訳なさそうに首に巻いたマフラーを口元に持ってきて、小さな声で「すみませんでした…」と呟く。