第3章 反逆の刃を空にかざす
「これが俺達に出来る戦いだ、俺達に許された足掻きだ!」
イアンの声が場を貫き、短い静寂の後に皆の胸に火が灯る。
言葉に伴う震えは、希望にも似ていた。
イアンの力強い言葉で、辺りが一瞬の間静寂にかえる。
その静けさの中で、自分の心音だけがやけに大きく聞こえた。
誰もが発言出来ずにいると、リコは口を震わせながらも言った。
言葉は小さいが、そこに込められた葛藤が伝わる。
「そんなの、納得出来ないッ」
リコはそう言って背を向け、歩き出す。
足音が乾いたリズムを刻む。
「おいリコ!」
イアンが呼びかける。
「作戦には従うよ。あなた達の言っていることは正しいと思う。必死に足掻いて人間様の恐ろしさを思い知らせてやる…!副兵士長が言ってた様に無駄死にさせるなんて、私はさせたくない…」
リコは振り向き、言葉を吐き出す。
目に涙が光るが、その声音は揺るがない。
そう言って私に顔を向けた彼女の顔を見て、私は実感した。
この子も、上に立つ者なのだと。
責任と覚悟が、言葉の裏に確かに存在している。
リコ、私もあなたの言っていることがよく分かる。
普通の人間は、リコと同じような意見を言う。
胸に去来するものは同じだが、今は選択の時だった。
別に、リコの意見が間違っている訳ではない。
こんな状況の中でも、はっきり意見を言えるのは、確かにすごいことだと思う。
だけど、その甘い考えも、今日で終わりにしなければならない。